★★★【トリック・オア・トリート!】★★★

 

 

 

「なー、コレ。良く出来てるよな」
 ロイの黒髪から、ぴょこんと生えた髪と同じ色をした毛並みの耳に、エドワードは感心したように呟いた。

 今日はハロウィン。

 そうと気付かずに東方司令部を訪れた兄弟は、いつもと違いすぎる司令部の光景にまるで異世界に迷い込んだような錯覚を 覚えた。
 普段、軍人という規則に縛られた生活をしているせいだろうか。各々好きな格好に仮装した彼らは、活き活きしているように見えて微笑ましかったが――それって、普通子供がやるんじゃないのか? そう思いながら、訪れた執務室。その部屋の主も例に漏れず、仮装をしていた。狼男という――女好きの彼にはうってつけとも思える、装い。
 なんだそりゃ、と呆れ半分に笑うエドワードも、ホークアイに寄って半ば強引に吸血鬼の仮装をさせられて。と言っても――牙と尖った耳を付けるだけという、簡単なものだったが。
 ちなみに、ハボックに連れて行かれた弟は、全身に包帯を巻かれてミイラ男の格好をさせられていた。

「――あまり、引っ張らないでくれたまえ。今夜この格好でパーティがあるんだよ」
 良く出来た耳に感心したエドワードが軽く耳を摘むと、苦笑混じりにロイは言う。
「パーティって…国民の血税で暢気なこって」
「そういう君も参加してもらうよ。――それに、これは市民のためのパーティだ。参加自由で、しかも仮装してきた人には菓子が出る」
「へぇ」
 いわば親睦会のようなものだと言うロイに、興味なさ気に返事を返して。
 しかし――間近で見ても良く出来ているその耳を、エドワードは再び指先で摘んで。
 ふと、思いついたように―――ぎゅっと、少し力を入れて引っ張った。
「―――痛っ!」
「えっ?」
 途端、ロイから上がった悲鳴に―――エドワードは驚いて手を離す。
 目を丸くするエドワードに、ロイは恨みがましい視線を向けて。髪から生えた耳を、労わるように手で撫で擦る。
「…酷いな、鋼の。痛いじゃないか」
「痛…? って、でも、ソレ」
 付け耳だろ?
 痛いだなんて、この男の悪ふざけに決まっている。
 冗談だろ、と呆れた表情を浮かべたエドワードに、ロイはにやりと口元に笑みを浮かべて。
「――…作り物にしては、良く出来ている。そう言ったのは…君じゃないのかね?」
 そう言って、静かに立ち上がる。
「言った…けど、だって」
「…知っているかい? 吸血鬼は美女の血を啜る。狼男は―――人間の、精気を」
 そんな話、初めて聞いた。首を小さく左右に振るエドワードに、ロイはそうかと微笑んで距離を詰める。
「…ばれてしまっては仕方がない。ちょうど、腹が減っていたんだよ―――パーティが始まるまで、付き合ってもらおうかな」
「え」
 何を、と返すよりも早く、エドワードはロイによってひょいと抱え上げられて。
「…君の精気は、美味しそうだ」
 突然の展開に言葉を告げられずにいるその唇を、味見でもするようにペロリと舐めると、鼻歌混じりに歩き出したその先は――執務室の隣に設けられた、ロイ専用の仮眠室。
「ちょ、な…っ!」
「なに、味見だけだよ――今日のところは、ね」
 上機嫌でそう言って、楽しそうに頬を寄せる男に。

 ぎゃああ、とエドワードは悲鳴を上げたのだった。



 その後―――本当に、味見程度で済んだのか。

 それは、2人だけが知る真実。

 



 

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"toyholic"コトコ様の処でフリー配布になっていた、ハロウィンイラスト&SSを
奪って参りましrた!
ここのロイさんはエドさんにメロメロなのが可愛いです。
エドさんも負けん気の強いお子様なのが萌え!
イラストもお話も漫画も描かれるコトコ様のサイトは、リンクページからどうぞv
コトコ様、ありがとうございました!

2006.10.15