
★ オマケ ★
「痛いじゃないか」
「自業自得だ」
首筋を噛んだ後、殴られた頭を押さえて、しかししれっと言うと、刺がたっぷり含まれた声が返って来た。
因に殴った後に逃げようとした少年は、逃走なぞ許す筈もなく捕獲してある。
普段不真面目さしか見せていない癖にこういう時だけ俊敏に動く腕を見たら、副官に銃を向けられる事必至である。
(ジャストフィットだなぁ。)
至福、と腕に丁度良く収まる少年のつむじを見ていたら、溺れる猫の様にじたばたと暴れながら威嚇して来る。
「お菓子を持ってなかったんだ。悪戯するしかあるまい」
「お菓子なら持ってたんだよ! 聞く前にテメェが仕掛けてきたんだろーが!」
ばっ!と、先程事務室やら何やらで大量に貰った菓子を突き出してくる。
「だがしかし、それは君が用意した菓子ではないだろう? それは無効だ」
「う」
確かに決まり文句に使う為に自ら用意した菓子ではない為、根がまっすぐな少年は強く言い返せない。
ほくそ笑むロイに、くそぅ、と睨みながら、何かを思い出したかのようにニヤリと笑う。
大方、そもそもは何か菓子をせびろうと考えていたに違いない。そして先程の仕返しに悪戯を考えているのだろう。
しかし。
(まだまだ甘いな。)
小さく笑った事には気付かず、少年が(本人的には悔しいだろう)目線が上の男に向かって声を発する。
「トリック オア トリート!」
「おや」
「お菓子かいたずらか、どっちだ?」
面白そうに、見遣った男に構わず、待ち構えるように答えを迫る少年。
「私も生憎菓子を持って居なくてね」
「じゃあ悪戯だな!」
嬉々とするエドワードにロイは意地の悪い笑みで問う。
「悪戯は構わないが、何をしてくれるんだい? 言っておくが、ハロウィンに因んだものだぞ」
「なんだよ、それ!カテゴリ狭くねぇ?」
書類や何かをダメにして、中尉にお仕置きをしてもらおうと思っていた(それが一番効果的だからだ)エドワードは、ロイに先手を打たれてしまった。
「別に狭くなかろう。あぁ、君みたいに錬金術の本ばかり読んでいるとユーモアセンスに欠けるからなぁ。
君、女性につまらない、とか言われないかい?」
「うるせーよ、女誑し!」
挑発に乗りやすいエドワードは、あっさりとロイの言葉のペースに乗って来た。
確かに、良くアルフォンスに「兄さん、女の子にモテないよ・・・」と言われる事多々らしい。
弟曰く、会話が実益重視で、遊び心がないのだそうだ。
「女誑しとは酷いな。気の利いた会話も教養の一つだよ」
「オレにだってソレくらいできらぁ!」
結構気にして居た所を突かれて、ムキになるエドワード。
その様子をみて、ロイは内心ニヤリ、と笑む。
「君にはどうかな。さっき私がやった事すら出来るかどうか」
「さっき・・・。あんなん出来るか、アホか!」
すんでの所で理性が回復したらしい少年に、男はもう一押しだな、と言葉を添える。
「あぁ・・・、そうだね、君の身長では難しいかもしれないね」
暗に首まで背が届かないと言われ、先程の理性は何処へやら。
「誰がミジンコチビだ!噛み付けば良いだけじゃねぇか!」
肩を竦めながら言うロイに、まんまと引っ掛かって。
腕の中から伸び上がり、両腕で首を引っ張って。
そして。
カプ。
ロイの首筋にまず柔らかい感触と、熱い吐息。
そして子猫が甘噛みするような、歯の感覚。
離れようとした所で、自らの唾液が付いてしまったのに気付いたのか、再び唇が触れて、ちゅう、と吸い取った。
その小さな破裂音に、少年が我に返り、バっと身を離す。
「・・・あっ、と・・・オレ・・・なに・・・」
急に自分が恥ずかしい事・・・愛撫のような首筋へのキスのような事をしたのに気付いたのだろう。
耳まで赤く染め上げて身体を固くする。
視線を彷徨わせたまま、未だ囲われている腕から抜け出そうと身じろいだ。
「えっと・・・、た、大佐が悪いん・・・んんっ?!」
そんな様子やら、あんな可愛い事をされて当然何もしないでいられる訳がない。
思わず、固まっている少年の細い腰と背中を抱いて、口付けた。
「ちょっ・・・! んふ・・・!」
何度か角度を変えて口付けて、抗議の言葉を出そうとした隙を狙って、舌を滑り込ませる。
「んーーーーーっ!」
舌を絡め取り、小さな口内を思う存分堪能して、少年の力がクタリと抜けた頃、再び抱き締めるようにして唇を開放した。
「は・・・はぁ・・・」
俯いてしまってすっかり表情が見えない彼に、初めて(多分)なのに少しやり過ぎたか、とそっと頬に手を伸ばす。
「鋼の・・・」
肩で息をする少年の耳許に声を落とすと、ガシ、と右手で手首を捕まれた。
「鋼の?」
「・・・の」
「え?」
「・・・こっ、この変態がーーー!!」
今度は見事に投げ飛ばされた。