GO!GO! ロイ・マスタング


「大佐、お茶」
「・・・君ね」

人の執務室のソファを占領した挙げ句、部屋の主(一応ここの司令官)に「お茶」と宣う子供は。
民衆にかなり知られた(自分もそうだが)、最年少国家錬金術師・鋼の錬金術師殿だ。
肩書きに比例して頭の回転は頗る良い。勿論出てくる言葉も小気味が良い。だが小気味良すぎて悪口雑言も3割増。見目も3割増。今はお子様な事と気の強そうな印象深い瞳で分かりづらいが、良く見ると奇麗な顔をしているからギャップも3割増。
しかしそんな子供に惚れてしまっている自分が居るから始末に負えない。その年令差や諸問題にうちひしがれる事多々な日々。
「全く、私の前でそんな不遜な態度を取るのは君くらいだよ」
「貴重な存在でラッキーじゃん」
「・・・紅茶しかないぞ」
「おー」
何だかんだで、小言を言いながら言う事を聞いてしまっている自分・・・ロイ・マスタング29歳。

「ほら」
「サンキュっあっ!」
「っと!」
ソファの横からカップを差し出した手と、エドワードが振り返ったタイミングが重なり、カップが落ちる。
「ワリ! 大丈夫か!」
「あぁ、軍服は生地が厚いからな。中まで染みていない。君こそ平気か?」
「ん、オレは平気。っと、タオル!」
咄嗟にエドワードの顔はかばったので彼にお茶が掛かる事は無かったが、逆にこちらの方に落ちて来たので軍服の上着に派手に掛かってしまった。
バツの悪そうな顔をしながら、慌ててトランクを漁りタオルを出して来る。
「あぁ、大丈夫だ。替えの上着がある」
「いや、一応水分取っておくぜ。染みになる」
バサ、と脱いだ上着をひったくるようにして、タオルをパンパンと当てる子供。
彼は普段は意地っ張りだが、悪いと思った時は謝るし出来る事を行動に移す人間だ。その不器用さ加減も愛しく、思わず笑みを浮かべてしまう。
そんな彼をいつか抱き締めて甘やかしたいと、密かに告白の計画を練っているのは気付きもしないのだろうな。
「あ、大佐。一応拭き取ったけど、後で残るようなら錬金術で消すからさ」
「お茶位、クリーニングに出せば落ちるだろう。構わんよ」
クローゼットから替えの上着を取り出し振り返ると、金の瞳でじっと見つめられた。
「どうかしたか?」
身長の関係でどうしても上目遣いになってしまうのだから、そんな風にじっと見つめられると正直落ち着かない。
「いや・・・」
そう言いながら、キョロ、と猫のような目を上から下へ動かし、ツカツカと近寄って来る。
そして。
「!!!」
ぎゅう、と腰に抱き着いた。
「はははは鋼のっ?!」
一体どうした事だ。彼が自分に抱き着くなんて。
これまた身長の関係で、丁度胸の当たりに頬を押し付けているのが落ち着かない。
軽いパニックに陥っていると、ますますギュウと腕を回してきた。
これはもしかして両想い?!
「大佐・・・」
「鋼の・・・」
くぐもった声が聞こえて、自分も両手を彼の身体に回そうとして。
腕が空回りした。
「はーっ、大佐って意外と鍛えてんのなー」
「は?」
アッサリと離れて、またマジマジと見られる。
「案外胴回り太いな。硬いから腹筋と背筋か? いつ鍛えてんだよ?」
「え?」
「やっぱなー、毎日筋トレしないとダメかなー」

ブツブツと全く色気のない言葉を発せられ、やはりこういうオチなのか、とうなだれた。


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ヘタレな大佐が好きです(笑)。

2008/01/24