「やぁ、君が噂の最年少国家錬金術師か。」
「マスタング君、相変わらず派手にやっとるようだね。」
南方の湖畔。
明らかに観光地沿いのホテル(勿論軍指定。バカンス用としか思えない)。
セントラルからの参加者がお偉方のジジイばっかりなもんで、
東方指令部の面々・・・と言っても、さすがに司令部を空にする訳には行かないので、エドワードとロイの他はロイの護衛としてホークアイとハボックだ、は若手と言う扱いになり、殆ど雑用のような事ばかりさせられている。
道中の列車ではやれ飲み物が足りない、湖に着いたら歴史文化について問われ(知識を試してる、とも言う。きっと分からない事があれば国の事も知らないのか、と揚げ足取りだろう。おかげで前日はパンフレットを読み漁った)、ホテルに着いても、部屋の備品がどうの、と言われて走る始末。
夜半は、ホテルの大広間で何処にでもあるような会社の酒の席のようになっていた。
偉い上機嫌のものもいれば、ここぞとばかりに上の地位のものに媚びへつらう者もいる。
一応、規律の厳しい軍と言った所か、バカ騒ぎにまではなっていないが、歩く度に酔っ払いに絡まれるエドワードは辟易していた。
ロイは、と言うと、内心は嫌々だとは思うが、さすがのポーカーフェイスでそれを隠し、胡散臭い事この上ない笑顔で応対をしている。
酒宴開催時は、ひっきりなしにあーだーこーだ言われていたロイだが、ようやっと周りのジジイどもも酒が回り各自のお楽しみに入ったようで、今度は存在などないかのように追いやったのだった。
途中で大総統にも労いの声は掛けて貰った二人だが、昇進を目指す実力の無い佐官達が奪うように大総統を取り囲んだので、早々に今回の目的とやらの「大総統直々の慰労」は終了した。
「・・・おい・・・。」
ようやっと見つけた、と凶悪な顔で壁際に立つロイに近づく。
一瞬、外面の良い顔で振り返ったロイだが、エドワードと目が合うなりいつもの顔になった。
「なんだ。」
「俺らへの慰労が一番じゃなかったのかよ・・・。」
「あぁ、疲れたか。お子様はもう眠る時間だったな。」
「誰がお子様だ!」
「まぁまぁ、ジュースでも飲みたまえ。」
ボーイからグラスを受け取り、グイ、とエドワードに渡す。
正直疲れていたので、不機嫌に取り、半分位を一気に飲む。
「アンタ、良く平気だな・・・。」
日中、ここぞとばかりに集中攻撃を受けていたのに、今も背筋は伸び、誰にいつ話しかけられても柔和な(胡散臭い)笑みを浮かべている。
「まぁ、セントラルの皆様には日頃から良く可愛がられているのでね。」
「アンタのとばっちりが俺にも来てるんですけど!」
「ははは、君の人気なんじゃないのか。」
「言ってる事が嘘くせぇ。」
ズズズ、と行儀悪くジュースを啜る。
「・・・いつもこんなんなのか?」
「まぁね。将来有望だとあちこちから引く手数多で参るね。」
気障ったらしく肩を竦めてみせた。
「へっ、言ってろ。」
通りすがったボーイから、手前の何だか分からないカクテルグラスを取り、ロイに押し付ける。
「おや珍しい。」
「年寄り飲んで休憩でもしてろ。」
「では有り難く。」
2006/05/22日記