
「・・・あっ!」
「相変わらず凄い集中力だな。」
目の前から、本が消えた、と思ったら、嫌味な声。
「返せよ!」
「少しは休憩を入れなさい。」
ふぅ、とため息を付かれながら、オレから奪った本をパラリと捲る。
「うるせぇな、アンタに関係ないだろ。」
腕を伸ばして、本を奪い返す。
「根を詰めて読んでも良いことないぞ。
集中力は落ちるし、頭に入るものも入らない。」
「今、凄い集中力って言ったばっかじゃねぇか。まだ平気だ。」
奪い返した本からさっきまで読んでいたページを探る。
「全くつれないね。」
「・・・。」
「頭を使っているとブドウ糖を浪費する。お茶でもしないかね?」
頭上から声が掛かって来るが無視。
「没頭するのはさておき、そんなんでは、襲われても気づかないぞ。」
「殺気ぐらい判る。」
一言で返す。
誰がそんなヘマするか。
パラリ、パラリ、と見落としは無いか、字を左から右へと追う。
一刻も早く、アルを元に戻してやりたい。
アイツは、こんな疲れた、とかそういう感覚さえ無いんだ。
色んな五感を忘れないうちに、取り戻してやりたい。
世界に散らばる情報なんて、どれだけ時間を掛けても集めきれない。
1分だって惜しい。
ふ、とまた視界から本が消えた。
「・・・大佐っ!てめ・・・っん!」
本を追って顔を上げた拍子に視界いっぱい広がる男の顔。
肩に手を掛けられ、少し深めに口唇を吸われて、離れていく。
「・・・ん・・・は・ぁ・・・何しやがる!」
少しばかり酸欠になりながら、睨みあげる。
「襲う、と言う意味は沢山あるのだよ、鋼の。」
まだ至近距離にある大人がニヤリ、と笑った。
「卑怯だぞ!」
「間違ってはいないと思うがね。」
また近づいてきた顔に。
「離れろ!変態!」
両手いっぱい押しのけて、すっくと立って。
立って。
クラリ。
・・・長時間座り続けていたせいで、立ちくらみを起こした。
「おっと。」
ガッシリ、と抱きとめられて。
「・・・あれ?」
「・・・本当に襲われたくなかったら、休憩を入れたまえ。」
苦笑交じりに、心配さを滲ませながら、抱きしめられた。
抱えられたままの恥ずかしさと、判る心遣いに顔が赤くなっていくのがわかる。
「・・・わかったよ!茶、大佐の奢りだろうな?」
「勿論。」
そっぽを向きながら毒づくオレに、フワリ、と笑った。
腕の中で。
「うーん、抵抗が少ないのもまた一興だが、抵抗されないと燃えないな・・・。」
ボソリと呟いた大人に肘鉄を右で食らわせた。
2006/09/03日記