年の始めに。 side-E

チラリ、と見上げて。

「なんだね?」
「・・・何でもねぇよ。」

ふい、と目を逸らす。


・・・どうにもやり辛い。

お正月の司令部に訪れて。
何でか良く判らないまま、中尉に着せられた東の国の民族衣装。
不思議な形で、生地が上等なのか、サラリと腕に滑る感触が気持ち良い。

けど。

これで外を歩くのはどうだろ・・・。

オレはともかく(不本意ながら、子供、って事でツッコミは少ないと思う)、隣のこの男。
仮にも大佐で東方司令部司令官なんだから、さ。

「何でこんな商店街歩かなきゃなんない訳?」
「良いじゃないか。たまには君とこんな風に街を歩くのも。」
「いや、場所がどーとかじゃなくて。」
「ではなんだね?」
「・・・目立つだろ。」
「新年でお休みの店が殆どだから、気にする必要はないよ。」

結局、大佐もその東の国の民族衣装を着ていて。
確かに。
普段だったら冗談じゃない!と思う所だけど、人がいないから、ま、いっか、と司令部を出た時にには思ったんだけど。
何より、中尉が丁寧に着付けてくれたから、すぐ脱ぐのも勿体なくて。

しかし。

この男が居るとなると別だ。
どうにも落ち着かないのはそのせいだ。
意外と、いや、ファルマン准尉が言うには、その民族は黒髪黒目の種族らしいので、一番似合うだろう、とは言っていて。
その意外と着こなしている、姿は姿勢の良さも手伝って・・・まぁ・・・黙っていれば男前風貌にはなっていた。

スル、と僅かな衣擦れの音がして。
オレの左手に大佐の右手が絡まった。

「おい!」
「ん?」
「ん?じゃねぇよ。放せ!」
「嫌だよ。」

サラリ、と断られてしまう。
どころか、余計に握る力を込められ、そっと引き寄せられた。

「誰も見ていないよ。」
「そう言う問題じゃなくて。」
「・・・ダメかい?」
「・・・・・・。」

コイツは普段偉そうな癖に、たまに急に捨てられた子犬みたいな表情をする。
実は結構弱い。
ほら、あれだ、小動物の縋る目に中々逆らえないのと一緒だ。

「・・・仕方ねぇな。」

言った途端。

それは嬉しそうに破顔した。


「?どうした?顔が赤い。寒いのかい?」

打って変わって、薄着だから風邪でも引いたら大変だ、と俄かに慌て出した彼に。

「・・・なんでもねぇよ。」

一蹴して。

落ち着かないのは、いつもと違う服のせいだ。

トクリ、と脈打った、自分の心臓に言い訳した。


2007/2/04日記

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御正月SS。
エドさん視点ver.



2007/4/30