「あちぃ〜〜〜〜〜・・・。」
ソファにタンクトップ姿でグテリ、と寝転がる子供。
大体の理由は分かってはいるが。
「上官の部屋で良い度胸だな。」
「んぁ?上官?上官様は何処に?」
「・・・君ね。」
口元をヒクリ、とさせながら、彼に近づく。
「ほら、特別書架閲覧許可書。持っていけ。」
「うぃ〜。」
ノロノロと右手を挙げようとして、左手に挙げ直す。
「おい・・・。大丈夫か?顔が真っ赤だぞ。」
火照った感じの頬に、寝不足だろう隈が出来ていて、おかしな顔色になっている。
「ん〜、今日みたいな炎天下だと、機械鎧が熱持ってキツイんだよ・・・。」
「なら、宿で大人しくして、夕方にでも来れば良かったじゃないか。」
「ん〜〜〜〜・・・。アルが・・・心配すっからさ。」
ゴニョゴニョと、彼らしくもなく語尾がハッキリしない。
成る程。
具合が悪い(この分じゃ夜も眠れていなさそうだ)のに、押して来た理由。
多分、心配されるのも勿論そうだが、温度を感じられない弟に平気なフリをしていたんだろう。
「全く・・・。ホラ、手を貸せ。」
「んあ?」
彼が先ほど自分から遠ざけた、右手を掴む。
「熱いな。」
「だからさっきから言ってんじゃねぇか。」
食って掛かる程の元気はないらしく、文句だけが返ってくる。
「こんな所でダラケられていても、他の者に示しが付かないからな。」
「ん?アンタ何発火布付けてんだよ。」
パキン。
乾いた、焔の錬金術師独特の練成音が響く。
「?・・・あれ?」
不思議そうに右手を見る。
「ちょっと失礼。」
「うわぁっ、何処触ってんだ!」
「うるさい。」
パキン。
左太ももの上で指を弾く。
もう一回、空中で指を弾く。
パキン。
「ア?あー!涼しくなった!」
「少しは楽になっただろう。」
手袋を外しながら、右手の温度と空調を確認する。
「おおー!さすが大気系錬金術師サマ!」
身体が楽になったのか、グッタリしていた分まだ若干の疲労が顔に残るものの、
表情は明るくなった。
やはり彼はこうでなくては。
「破格だぞ。感謝したまえ。」
ニヤリ、と笑うと、てっきり「等価交換、何が目的だよ?」と警戒しながら聞いて来るかと思いきや。
「おうっ!サンキューな、大佐!」
珍しく、嬉しそうに素直に笑った彼に。
「・・・十分な対価だな。」
「え?」
「何でもないよ。」
帰って休む場所、としてくれるように。
夏の間は、部屋の空調を整えておこう、と思った。
2007/07/19日記