
「うー・・・さむっ」
「・・・だらしねぇなぁ」
たまたま、帰宅するロイと資料室お籠もりからピックアップされたエドワードが一緒の道中になった。
「そうは言ってもね。この気圧は冷え込むぞ」
「普段運動してねーから新陳代謝が悪いんじゃねぇの?」
カカカっと笑うエドワードにムッとした様なロイ。
「ファルマン准尉曰く、”子どもは風の子”と言う言葉があるらしいぞ」
「誰がいつまで立っても高い体温のお子様か!」
「ほら、風の子、元気じゃないか」
暴れかかってくるエドワードを笑いながら器用に避け、枯葉が舞い落ちる夜のイーストシティを見上げる。
「オレは暑いのより、冬の冴えた空気って好きだけどな」
「寒がりでは無いのかい?」
「んーーーーー・・・夏の暑さの方が苦手だな。機械鎧に熱籠もるし」
軽く握った右手から、カチャリ、と手袋の下で軋む音が聞こえる。それを横目で見ながら。
「私は冴えた空気は好きだが、どうにも冷え症な性質らしくてね。暑さの方が平気かな」
手の先をこすり合わせて、眉間に皺を寄せる。
「あー、アンタ夏でも軍服きっちり着込んでるよな」
「君こそ、冬でも薄着のままだな」
「動いてれば暖かいし」
そう言ってタタっと、コンパスのせいか、若干遅れ気味だった位置から走りよった。
「確かにな。しかしデスクワークばっかりしてると、動く事もないからな」
「やっぱ運動不足じゃねぇの?」
追い付き追い越した場所から振り返り下からニィっと覗き込む。
「君ほど動き回っていない事は否定しないが、それなりに動いてはいるぞ」
「視察とか?」
「あんなの動いている内に入らん。まぁ室内で書類にまみれているのよりはマシだが。・・・が、冬の市内視察は寒くてやはり嫌だなぁ」
しみじみと嫌そうに言うロイに、本格的に寒さが苦手なのかもしれない、と意外な弱点を見つけた事に笑う。
「笑うんじゃない」
「ははは、だってホントに嫌そうな顔してっから」
「寒いものは寒いんだ」
憮然と抗議するロイに、何だかどうしようもないダメな子を相手にしている気分になって。
「ほれ」
「ん?」
左手を差し出した。
「手!」
「手?」
言うが早いか、ロイの右手を取って繋ぐ。
「ちったぁ暖かいだろ。右手の方じゃ無理だけどな」
「・・・」
ポカンとするロイに、そっちの手はポケットにでも突っ込んでおけよ、と言って先導を切る。
ぶっきらぼうなエドワードの暖かさに、じんわりと心が暖まった。
小さく、笑み。
「どうせならこっちの方が良いな」
「うわっ!」
前を歩く小柄な身体をコートに包んだ。
「はなせーーっ!」
「あー、暖かい・・・」
「オレで暖を取るな!」
「先にやってくれたのは君だろう?」
コートに包まれたまま歩くと、ロイの方が歩幅が大きいので(歩き辛いせいもあるが)、自然ともたれかかるような歩き方になってしまう。
「歩きずれぇよ!」
「ちゃんと前見てるから大丈夫だよ」
それに、と首を落として、エドワードの耳の近くに顔を寄せ、囁いた。
「寒さに強いと言っても、機械鎧の部分は痛むだろう?」
「・・・っ、別にっ!」
「アルフォンスの事を気にして、平気な振りをしてるけれど、たまには身体に正直になって休めなさい」
労わるような言葉に、でも誤魔化していた部分を指摘され、そっぽを向く。
「・・・平気だっつーの。っつか、大佐が暖まりてーだけだろ!」
「ははは、バレたか。良いじゃないか、私も君も暖かいし痛くないし、一石二鳥だ」
先程の空気を流すように、しれっと笑いながら答えるロイに、仕返しとばかりにもたれかかり、思いっきり体重を掛けた。
それに「おや?」と目を開いて、笑う。
「重いよ、鋼の」
「どーせなら運べ!」
「姫抱っこが良いかい?」
「ぜってーゴメン!」
「ははは」
ズリズリと、おかしな歩き方をしながら、二人は帰路についた。
2007/11/20日記