Special Day。

「なにこれ?」
「やぁ鋼の。久しぶりだな」

久々訪れた東方司令部司令室。
一歩踏み入れると、いつものように執務机に踏ん反り返った男が居た訳だが、その背後に見慣れぬモノがあった。
「頂き物だよ」
ギシリ、とチェアを軋ませて肩を竦めて背後を振り返る。
「何で?何かあったっけ?今日」
「・・・いや」
キョトリ、とその、箱に入ったプレゼントの山を見上げると、幾分間があって男が答えた。
「失礼しやーっす。大佐、追加です」
ガチャ、とハボックが入室し、また箱が運ばれてきた。
「よぉ大将。久しぶり」
「少尉久しぶり。なぁ、コレ何?今日何かあるのか?」
応接のローテーブルの上に、色とりどりのラッピングされたプレゼントが入った箱が置かれ、それを覗き込みながら問うと、背の高い少尉が不思議そうな顔をした。
「何って・・・。今日は大佐の誕生日だろ。良いよなぁ。こんなに色んなお嬢さん方からプレゼント貰えて」
オレにもせめて一個で良いからプレゼントしてくれる彼女がいりゃあなぁとどんより呟いて、仕事があるからと去っていった。

「・・・誕生日・・・」
ギギギ、と男の方を見遣る。
「まぁそうだが、普段も忙殺されて自分でも忘れている位だから君が気にする事はない」
このプレゼント、受け取る気はないから今年もお嬢さん方には悪いが施設に寄付するかな、と笑って言った。
と言われても。
「えっと・・・悪い・・・」
「君が今日帰って来てくれただけで嬉しいよ。夕食は一緒に取ってくれるかな?」
「お、おう・・・」
「それは良かった」
全然知らなかった事に謝罪するとニコリ、と笑う。
一応周りには秘密だが、この男とはその恋人同士なのだ。普段あれこれと世話を焼いてくれたり、そう、自分の誕生日には、日付を言った覚えはないのに抜かりなく、どうやって手に入れたんだと言うような稀少本や恥ずかしくなるような大きな花束、食事などを演出してくれていた。
「さ、そんな所に立ってないで座ったらどうだね?お茶を入れよう」
こちらが気まずい想いをしているのに気遣いそんな事を言って立ち上がろうとしたのを制し。
「あ、あのさ、悪いオレ何も用意してない・・・」
「構わないと言ったろう。今日の日に君の顔が見れただけで役得だ」
「すぐに用意するとかはちょっと無理だけどさ、何か欲しいものとかあれば探してくる!」
笑う彼に、さすがに誕生日位たまにはお返しと言うかいつも与えられっぱなしだし何か喜ばせてやりたい。
「気にしなくて良いのに」
苦笑するように言うのに、そうやっていつも甘やかしてくるロイにどうしても何かしてやりたくなった。
「オレが気にするの!」
「気持ちだけでもありがたいんだがね」
「何かねぇのかよ?」
およそプレゼントをやろうと言う口調ではなかったが気持ちと裏腹に態度は中々素直になれない。
それを知ってか知らずか、楽しそうに笑いながら考えるように顎に手を当てた。
「そうだな・・・。ふむ。ちょっとこちらに来たまえ」
「なに?」
何か思いついたのか、と近づいて。
「わっ」
腕を取られてチェアに座る男の膝に抱き上げられた。
「ななな何だよっ?!」
逃れようと身じろぐと、腰をがっちり捕獲された。
まさかこんな所で不埒な事でもするつもりかっ?!と慌てた所で男が片手で腕を取ってきた。
「手を」
「手をっ?」
「首に」
「何でっ?!ってかこんなトコで何する気だっ!」
やっぱり何か欲しいものとか言ったのは失敗だったか、と真っ赤になりながら問い返すと、キョトリ、と男にしては珍しく目を少し瞠った。
「・・・違うよ。君が考えているような事じゃない。勿論それでも私は歓迎だが」
「オレは何も考えてねぇっ!じゃあ何っ?」
ククっと面白そうに笑われ、早とちりしたのが恥ずかしくまくし立てた。
「甘えてくれ」
「へっ?」
己の手を首に巻きつけさせた。
「君に甘えて欲しい」
「・・・え?・・・っと、えと、アンタが甘えるんじゃなくて?」
意味が分らなくて。
そしてプレゼントと言うなら普通逆じゃないか?
「私はいつも甘えさせてもらってるから」
そんな事を言って、コツリと額を合わせられる。
「そ、そんな覚えねぇけど・・・」
「君は無意識にしてくれているからね。逆に中々君は甘えてくれないから。甘えて欲しい」
日中の執務室。
膝の上に乗って首に手を回すなんて、羞恥が勝ったけど、口が良く回る割に案外滅多に本気で自分に希望を言う事なんてない男だから。
欲のない深い黒曜石の瞳に見つめられ、おずおずと残った片手も首に伸ばす。
「・・・こんなんで良いのかよ?」
「充分」
嬉しそうに笑う顔に、キュ、と腕に力を込める。
「恥ずかしいんですけど?!」
「その顔も良いんじゃないか」
ふわ、と柔らかく頬を撫でられる。
「〜〜〜〜〜っ」
「!」
優しく触れる手を押さえて、素早く唇を寄せ。
驚いている隙に、ギュウと抱き付き首元に真っ赤になっているだろう顔を埋めた。
「・・・ありがとう」
一番のプレゼントだ、とゆっくり背中を撫でられた。

そんな特別な日の昼下がり。


2008/06/07日記

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出遅れ気味にロイの日記念。
甘いの書こうとして挫折の兆しが・・・。
エドさんに甘えて欲しいっていうロイ殿の望みをプレゼントと言うかなんと言うか(何)。

2008/07/06