「あっちぃーー。このクソ暑いのに外で待つ羽目になったじゃねぇか!」 「それは済まなかったね」 全然済まなさそうでも無く言う男。 この炎天下の中、軍服をきっちり着込んでいる癖して汗一つ描いていない。 しかし態度は涼し気だが、見る分には暑苦しい。 「何分喋ってんだよ!」 「私も出来れば手短に退出させて頂きたかったんだがね」 ふぅ、とロイ自身も小さく溜め息を付く。 「だったらさっささと出て来いよ!」 「そうは言っても中々難しいのだよ。それに元はと言えば君が言いだしたんじゃないか」 「う」 郊外に蔵書家の富豪が居て。 その中にある貴重な文献を見せて貰いたかったのだが、当然子供は門前払いにされ。 銀時計を見せても、身なりがどうの、本物か?と言われ入れて貰えなかったのだ。 仕方なくロイに紹介状を書いて貰おうと思い司令部を訪れた訳だが。 「近くに用事もあるしついでだから乗って行きたまえ。そのまま身元保証人になろう」と車で連れていって貰ったのだ。 なので、文句は言えない。 だが、案の定そこの夫人がロイを気に入り、ずーっと話し続けたのである。 帰り際、挨拶をした所で再び長い話が始まり、しばらく眺めていたものの付き合ってられねぇ、と見たい文献も読んだし(ハズレだった)、先に車向かってるなー、と出ていったが。 鍵も持っていないし、しばらく外で待ちぼうけを食ったのであった。 「あちー・・・。喉渇いたなぁ」 「あぁ、お詫びに飲み物でもごちそうしよう。私も相槌のうち過ぎで喉が渇いた」 本来ならロイが詫びる事は一つもないが、エドワードが何か言う前にさり気なく自分も飲みたいのだと示して彼を誘う。 「あ、あそこ! カフェ発見!」 「駐車場はあるかね?」 「脇にあるっぽい」 「そうか」 目当ての店に辿り着き、奇麗に駐車し、店内に入った。 早速メニューに目を走らせる子供に笑い、ロイはウェイトレスを捕まえる。 「アイスコーヒーを」 「畏まりました」 「君は?」 「えーっと・・・ちょっと待って・・・。あ! ここソーダ水がある! それ!」 「はい」 はしゃいだエドワードにウェイトレスは笑顔を向け、店の奥に去っていった。 カラン。 氷の溶ける涼し気な音がする。 「うめーー。生き返る!ライム入ってると最高だよな」 ご満悦で飲むエドワードにロイはクスリと笑う。 「君は本当に飲食は楽し気にするな」 「旨いもんは旨い!良いじゃねぇか!」 グラスを掲げて滅多にロイの前では滅多に見せない幸せそうな顔で炭酸の泡を覗く。 「そうだな。・・・ソーダ水、そんなに美味しいのかい?」 「飲んだ事ねぇの?」 同じように泡を覗き込んだ男にキョトリ、と目を向ける。 「子供の頃には飲んだが・・・。甘いものは昔から余り得意では無くてね。 一杯はさすがに多いから飲んだと言っても一口貰う程度だったし余り覚えてないな」 「へぇー、旨いのに」 「そうかね。君が飲んでいると旨そうに見えてきたな」 「ほれ」 「?」 グイ、とグラスを差し出される。 「飲んでみれば?」 「・・・良いのかい?」 「大佐のおごりだろっ?」 驚いたように問う男に、照れ隠しかそっぽを向いて押し付ける。 柔らかく笑い、差し出されたと言うより突き出された感の強いグラスを引き寄せ、カラリ、と氷をストローで弄んで。 「では、頂きます」 「おう」 ズ、と小さくストローの啜る音。 「・・・旨いな」 「だろー? 夏はやっぱコレだよな!」 満面の笑みで笑うエドワードを見てロイも笑顔を向ける。 「ごちそうさま」 「いや、大佐のおごりだし」 グラスを戻すべく前屈みになっていた子供に顔を近付けて。 「いや、・・・間接キスをごちそうさま」 ニヤリ、と笑う男。 「なっ・・・!」 カっと赤くなった少年の水分に濡れた唇を拭い。 「あぁ、私のアイスコーヒーも一口飲むかい?」 「いらねぇ! っつかそう言う事言うな!」 「事実じゃ無いか」 「うるせぇ!」 「ほらほら、余り興奮するとまた暑くなるぞ?」 静かだった店内は俄に賑わった。
2008/07/30日記
********************************************************************************** 普段炭酸飲料って飲まないんですけど、たまに飲みたい波が訪れます(笑)。 夏はコ●コーラか辛口のジンジャーエールかなぁ。 夏の話なのにスッカリ忘れていて冬に更新移動でスミマセン・・・。
2008/11/22