「うわ」 「すごいな」 新年。 年始の願掛けだと言う『初詣』と言う行事が流行っている、と言う事で、視察ついで(兄弟はそのまま連行された、とも言う)に訪れた『神社』。 さすがに流行り、とだけあって、境内はもの凄い人だった。 「・・・これ、行くの?」 「・・・まぁ、折角来たんだ。ハボック、先導切れ」 「オレっすか?!」 有無を言わさない上官命令に、えぇー?と言いながらもユラリ、と大きな身体を動かす少尉。 「ボク、ちょっとこれは危ない気がするから待ってるよ」 弟が、うーん?と言う風に自身の身体と人ごみを見比べてから言った。 「アル・・・」 「兄さん、ボクの分まで祈って来て?」 些か落ち込んだ声で兄が言ったのが分かったのか、弟はね?と可愛く首を傾げた。 「あら。じゃあ私もアルフォンス君とお留守番してようかしら」 「中尉、そんな」 「私も人ごみはちょっと苦手なの。もう少し空いた時期に一緒に行きましょう?」 ホークアイがニッコリ言うと、兄弟揃って嬉しそうにはにかんだ。 「よっしゃ、じゃあ先ず兄ちゃんがお前の幸せ祈って来てやるな!」 「自分の事で良いよ〜」 「うんにゃ!」 兄弟愛が繰り広げられている中、ロイはエドワードの首根っこを掴んだ。 「ほら、ハボックを見失うぞ」 「首掴むな!」 「アルフォンスの願いは私が届けてこよう」 「オレがやるっての!」 ニコリ、とロイがアルフォンスに向かって言うと、エドワードがキーッ!と噛み付いて来た。 「君は自分の身長の願掛けでもしたらどうだ?」 「んだと!」 「まぁまぁ、行って来るよ。では中尉、後で」 「はい」 「兄さーん、身長祈って来て良いからね〜!」 弟まで酷い声援を送って来るのを背中に聞きながら、人ごみの中を進行した。 「・・・やっと着いたーーー!」 「長かったな」 ふぅ、と隣でも溜息をつく声。 「後がつかえている。ほら、賽銭」 チャリン、とエドワードの小さい手に硬貨を握らせる。 「自分のあるっての」 「それはさておいて、早く投げなさい」 確かに後続が続々と押し寄せて来ているので、ぱぱっと、狙いを定めて硬貨を投げ入れた。 パンパン。 拍手を打って、祈りを捧げる。 エドワードは、取り敢えずは弟が元に戻れますように、と後でこっそり身長も付け足した。 ソロ、と目を開くとロイは未だ目を閉じていた。 「・・・」 エドワードはもう一度目をつぶって、1つお願いを追加した。 -------------------- 「わわっ」 「っと」 最前列から抜けて、元の場所に戻ろうとしたものの。 行きの一方通行の流れに身を任せていた時と違い、逆流は難しかった。 「ぐへ」 「鋼の?」 悲しいかな、背が小さい為にエドワードは人ごみに流されてばかりであった。 「ちょ、っと苦し・・・」 「鋼の、こちらへ」 またも人ごみに流されかけていると、グイ、とロイに左手を引っ張られる。 「わっぷ」 「大丈夫かね?」 ロイに引き寄せられ、やっとエドワードは足元が落ち着いた。 「ひっでーな」 「全くだな。とっとと抜けよう」 「おう」 早いところ抜けようと、歩き出して。 手が繋がれたままだと言う事にエドワードは気付いた。 「大佐っ、手!」 「うん?」 「や、だから・・・」 何でか直接言うのが恥ずかしくて、エドワードはゴニョゴニョと語尾を濁す。 「手? あぁ・・・」 ロイは合点が言った、と言うように繋いだ手を見遣り。 「・・・このまま、で」 「え?」 ぐ、とさらに繋いだ手に力が籠もるのに、エドワードはロイを見上げた。 「また流されてしまうだろう? ほら、おいで」 「わ、ちょっと・・・」 手を引かれて、さらにロイの身体に寄せられ慌てる。 「良いから」 「・・・しゃーねーな」 低い気温にほのかに暖かい繋がれた手。 隣のロイをチラと見上げながら、口の中だけで笑う。 ロイもまた、チラ、と金色の旋毛を見下ろして、小さく笑った。 「兄さんお帰りーー」 「大変だったぜ。でもお前の幸せ願って来たぞ!」 「ありがとう」 「エドワード君、暖かいお茶あるわよ」 「中尉ありがとー」 無事全員合流して、神社を出た。 弟と話しながら、左手を握ったり開いたりして。 副官と話しながら、コートのポケットの中の手を緩く握って。 2人が追加した願い。 『今年はもう少し、近づけますように』
2009/01/01日記
********************************************************************************** 2009年新年一発目のロイエド話でした。 エドさん13歳位なイメージで。 なのでちょっと幼い感じです(笑)。
2009/03/24