久しぶりに東方司令部に訪れると。 「何だ?」 「何だろうねぇ」 皆一様にマスクをしていた。 構内に入ろうとすると自分も例外なくなのか門衛にマスクを手渡された。 「あらエドワード君、アルフォンス君いらっしゃい」 「こんちは中尉」 「ご無沙汰してます」 司令室に入っても馴染みの面々も皆同じようにマスクをしていて。 「なぁこれ何?」 その光景を有能な副官に訊ねると 「・・・科学班が刺激臭のある薬品瓶を割ってしまってね・・・」 朝から掃除が大変なのよ、と目元から上しか見えない表情で悩ましげに眉をしかめた。 「よぉ」 「やぁ鋼の。久しぶりだな」 報告書を出しに行くと、例に漏れず司令官殿もマスク着用だった。 「瓶割ったんだって?」 「あぁ聞いたのか」 そして彼も少し眉を寄せて苦笑した気配を見せた。 「っつーか科学班なんてあったんだな」 「そりゃあね。毒物犯罪や麻薬捜査もあるからな」 確かにそうだな、と今まで何故か別の研究所・・・第五研究所のような所にでも居るのだろうと思っていた考えを払拭した。 「まぁ掃除頑張れよ。ほい報告書」 「あぁ、何か収穫はあったかね?」 受け取りながら椅子に腰掛けている男は伺うようにチラリと上目遣いをしてきた。 口元が見えずに、その涼やかな視線だけがこちらを見据えて。 不覚にもドキリとした。 「な、何も」 「そうか」 フイと目を逸らして、じゃまた後で来るよ、と踵を返そうとして。 「鋼の」 「ん?」 振り返った所で、視界がぼやける程近くに男の顔があった。 「・・・ん」 離れる、いつもと違う温もり。 「マスク越しと言うのも、もどかしくて中々色っぽいね」 目だけで嬉しそうにする男に 「〜〜〜アホっ!」 ベチンとマスクを叩いた。 「赤いぞ?」 「見えないくせにガセ言うなっ」 「では夜にでもゆっくり見させてもらおう」 生の方が断然良いからね、と指先でそっとマスク越しに唇を撫でられた。 「バカ言ってないで仕事しろっ」 「はいはい」 クスクスと笑われて、勢い良く執務室を出た。 執務室を出た所でしゃがみ込む。 顔半分が覆われていることで、いつも以上に強く感じる視線。 近いようで、遠い体温。 いつもと違う感触にドキドキした。 −−−それと。 唇をマスクの上からなぞる。 「・・・もっと、」 −−−ちゃんと直に触れて欲しいだなんて−−− 思ったなんて、言えない。
2009/05/20携帯日記
********************************************************************************** インフルエンザをネタにしてしまってすみません(不謹慎)。 通勤電車で皆一様にマスクしていて思いついた話。 たまには可愛い兄さんで(笑)。 携帯日記の小説は大概通勤中or帰宅電車中なんですが(時々電車酔いして投稿だけ後からする時もありますが)、 ・・・朝から通勤電車で小説打つってどうよ・・・、とさすがに恥ずかしい話の時は思います(笑)。
2009/08/30