★★★

 

イイ塩梅。


私は自分で言うのも何だが、生まれ持ったものがかなり恵まれている。

この国には珍しい神秘的と言われる黒髪黒目。
甘いマスク。
軍人として鍛えられた、だがスレンダーな体。
背も低くもなくやたら高くもなく、バランスが取れている。
頭脳明晰、容姿端麗、左官のポジションに国家資格保持者、地位も名誉もバッチリだ。
勿論資産だってある。
気前だって良い。
付いてきてくれる部下達にも恵まれている。

街へ出れば女性達に囲まれ、お誘いやお見合いだって断り切れない程舞い込んで。
引く手数多で、一晩の甘い時さえこちらから選べる立場だ。


―――だが。

私は最近変なのだ。

美しい女性よりも。
可愛い女性よりも。
甘い言葉を掛けてくれる者よりも。
賞賛の声を与えてくれる資産家たちよりも。

気になる、一人の少年がいる。

「クソ大佐!」
「無能!」
「頭は大丈夫か、若ハゲ!」
「ナンパ野郎!」
「サボリ魔!」

その少年は、いつもこんな調子で何一つ媚びてくる事も、少しの笑顔を向けてくる事さえない。
そんな到底部下からとは、ましてや14も年下からの言葉とは思えない、悪口雑言の少年が、
―――とても気になって仕方ないのだ。

本当なら上司として年長者として保護者として、叱るべき態度なのに。

なのに。


「ジロジロ見てんじゃねーよ! 誰が良く見ないと見えない程のマイクロサイズか!」

おぉ・・・。

「まだ見えねーってか?!老眼じゃねぇのか?!」

あぁ・・・。

「聞いてんのか?!耳までジジイかよ?!」

ふぉぉ・・・!

「アンタ、サボリ過ぎで脳みそ腐ったんじゃねぇの?!」

これ・・・!

「中尉に風穴開けて貰えば風通し良くなってちったぁマシになるんじゃねぇ?」

これだ・・・!


普段歯の浮くようなセリフを言うのも言われるのにも慣れているからか、この歯に衣着せぬ物言いが何とも心地よいのだ。
この、口の悪さも日頃周りから貰う言葉からしたら丁度良いスパイスのようで。
あれだ、甘いものをずっと食べているとしょっぱいものが恋しくなるのと一緒だ。


「良い、良いぞ!そのしょっぱさが君の魅力だ!」
「・・・・・・はぁ?」

この絶妙な塩梅加減を伝えようと小柄な少年の肩を掴むと、彼は稀有な金瞳を、もの凄く胡散臭いものを見る目つきと可哀想なものを見る目つきと、見事に半々に表現して来た。


「あぁその瞳も絶妙な塩加減・・・!」
「・・・・・・・・・中尉ーー!コイツ変!」
「良いぞ、鋼の!」
「変って言うかキモい!」
「そうだ、それでこそ鋼の!」
「放れろ変質者!!」
「うむ、もっとだ!」


ぎゃあぎゃあと騒ぐ少年が手放せなくて。
最後にはついに彼から(甘い)懇願で「お願いだから離して」と半泣きの顔で言われて。
今度は生意気な彼の甘い言葉にズキュン!と来て、堪らないと思った。


塩気と甘味。
この二つを上手く兼ね備えている人物なんてそう居ない。

「しょっぱさの中の甘いのも良いな!」
「っつーか本当意味分かんねぇよ! 頭沸いてんじゃねぇのか?!」
「うむ、また塩気か! やるな鋼の!」
「ああああーーーーー!!」


エンドレス。



口は悪いが優しくて。
態度はデカイが仲間思いで。
気が強くて可愛くて。
豪快で照れ屋で。

これは手放せないだろう。そうだろう?


「良いな、ずっと傍に居たまえ」
「やなこったい! っつーか離せーーー!」


こんな絶妙な塩梅の彼を手放す事なんて、きっと一生出来ない。
だから

「ずっと離さないよ?」

そう、囁いた。




それから。
・・・夜もイイと知るのはもっと後。


2009/11/12携帯日記

**********************************************************************************
時々発作的に、変な増田さんが書きたくなります(笑)。

2010/05/17