★  Blind Game ★




・・・ Prologue ・・・
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「鋼の。風呂が沸いたから入って来なさい」
 コンコンと客間のドアを叩いて声を掛ける。
「すみません、大佐」
 しばらくすると、鎧姿のアルフォンスが出て来た。彼の背後にエドワードの後姿が見える。
「私はしばらく自室にいるから」
「ありがとうございます」
 そう言って上の部屋を指すと、
「イテッ!」
 エドワードの声が中から聞こえてきた。
「ちょっと兄さん。大人しく待っててよ」
 アルフォンスが振り返る。
「別にこれ位の距離、大丈夫だっての」
「そう言って、いま足の小指ぶつけたんじゃないの?」
「うっ、何故それを!」
「・・・全く、何をしているのかね、君は」
 どうやら大丈夫そうなので、ひょいと部屋を覗いた。
「うるせー! 元々は大佐のせいだろ!」
「私のせいではないだろう?」
「アンタがこの家に居なければ!」
「ここは私の家なのだがね?」
 呆れたように言うと、エドワードは詰まった。
「・・・アンタの変人教師のせいだろ!」
「・・・・・・それは否定しないが」
 明後日の方向にビシっと指を突きつけたエドワードの手を取り、自分はここだと向きを変えさせた。
「んだよ、そこかよ大佐」
 普段睨んで来る、強い金の瞳は見えない。
「ここだよ。足元に気をつけてな」
 道を示すように手を引いてやると、エドワードは一人で歩けると言う風に危なげない足取りで歩を進めた。
 金色の髪の後ろで、結び目から垂らした布が揺れる。
 ―――エドワードは現在、目隠しをして過ごしていた。
「うーーー・・・ちっくしょー。教師と生徒揃って恋愛とか頭に花が咲いてんのかっての」
「兄さん、失礼でしょ。それに悪い事じゃないとボクは思うけどね」
 ブツブツ言うエドワードにアルフォンスが面白そうに返した。
「だったらお前がなれば良いのに!」
「生憎ボク鎧だからなれません〜。それにしても好みの子とかホントに居ないの? 兄さん何歳さ」
「やかましい!」
 明らかに面白がる声音のアルフォンスに反論するエドワード。この分ではまだ恋愛対象はいなさそうだ。ロイは気付かれないように安堵した。
「仕方ない。何なら私で手を打っても良いぞ?」
「それ良いですね」
「良くないぞ! アル! それに何が仕方ないんだ!」
 呑気に笑ったアルフォンスにエドワードが吼える。
「一般女性相手よりはそんなに問題も損は無いと思うがね?」
 そうだ。通りすがりの一般女性よりよっぽど良い。
例えそれが短期間であっても。
「何が悲しくて、男と目を合わせなくちゃなんねんだ」
「どうせ短い期間じゃないか。目隠しをして過ごしたりするよりは、楽だし後腐れないと思うが。どうせ私は普段家にいないしね。本当に好きな相手がいれば別だが、何の関係もない女性を選んで何か本格的に問題が生じたら困ると言ったのは君だろう?」
「・・・そう、だけど」
 エドワードは悔しそうに黙った。
「・・・まぁ早く探してあげるから。風呂に入って来なさい。アルフォンス、宜しく」
「はい」
 兄さん行くよー、と、アルフォンスはむくれるエドワードを引っ張っていった。

「・・・金色の瞳が早く見たいんだがね」
 その後ろ姿を見送って、ロイは呟いた。
 本人にはもちろん、誰にも言えない事だが、自分はあの少年に恋をしている。
 ずっと、前から。
『私で手を打っても良いぞ?』
「・・・本気だとは思われていないだろうなぁ」
 本人には告げるつもりは無かったが。
「痺れを切らして一般女性になど行かれてしまったら困るな」
 
 さてどうしたものか、とロイは自室に向かった。



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2010年08月14日 夏コミ(CM78)発行。

目隠しエドワードさんです。
久しぶりに錬金術の出てくるお話を書きました。
今年は変な増田さんばかりだったので(遠い目)。
しかし一目惚れって(笑)!と言うツッコミは書いた本人が既にしておりますので、
スルーでお願い致します(あ)。
当社比、若干R表現が強いかもしれません・・・。夏だし、と言う事で。

折角の初・夏コミなので本誌最終回ネタをやろうかと思ったんですが、
やはり本誌凄過ぎて、まだ手を出せませんでした(笑)。

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