★  1年目のクリスマス ★


― 一部抜粋 ―

「・・・疲れた?」
「いや? 何故だい?」
「・・・何か、喋らない、から。・・・仕事無理して休んだんじゃねぇのかな、って」
(それは休んで貰わなくても良かった、と言う事だろうか)
 心配してくれたのに、昨日見た光景がチラついてそんな卑屈な事を思ってしまう。
「そんな事ないよ。君と過ごせるのならそんな事どうと言う事ない」
「・・・うん」
 なら、良いけど、と浮かない顔でエドワードが呟いた。サラリと金髪が揺れる。
「・・・今日はいつもと格好が違うね」
「え?! へ、変?」
 強引に連れ出してから言うきっかけを失っていた事を告げると、エドワードが慌てたように首元を弄った。
「いや、良く似合っているよ」
 今日のエドワードはオフホワイトのダッフルコートに、白のゆったりとした編みのタートルネックセーター、こげ茶色の丈が短めのパンツ。その下から編み上げのブーツが覗いて、まるで寄宿舎の学生のような、普段の彼からしたら少し可愛らしい服装をしていた。
 昨日の様に濃いグリーンのコートでも金髪が美しく映えたが、今日のような白基調は太陽色の金髪の見事さと肌の白さが余計映えて、益々綺麗な印象を受ける。髪も高い位置に1つに括っているせいか、少し大人びて。格好とのアンバランスさがまた良いバランスとなっていた。
「アルの見立て、なんだけど」
 照れたように言うのに、一応今日の為に服を選んでくれた彼に嬉しく、やっと笑みが浮かんだ。
 こちらが笑った事に安堵したのか、エドワードもはにかむように笑った。
(そう、笑ってくれるだけで良いと思ったじゃないか
)  恋人同士になる前はそんな事だけを考えていた筈だ。・・・仮にハボックと付き合う事になったのだとしても、彼が幸せなら、良いと思わなければ。―――勿論、誰よりも自分が彼を幸せにしたいのだけれど。
(どうにも彼の事となると欲が増えていけないな)
 今まで思った事のない独占欲に気付いて、自嘲した。
(でもせめて今は、未だ恋人同士の今だけは・・・)
 最後のデートならば、沢山なるだけの笑顔を与えてやりたい。
 諦め悪いと思いながらも、どうしても離しがたくて見上げてくる金瞳に笑いかける。
「―――・・・凄く、綺麗だ」
「綺麗って何だよソレ・・・」
 自覚の無い彼が呆れながらも照れたように言うのに。
「言葉の通りだよ」
 耳元に顔を寄せる。
 歩いている内にクリスマス装飾がされた遊歩道を抜けて、丁度人の流れが途切れた場所に着いていた。さっと周りを見渡して、誰も居ない事を再度確認し、金髪を掬う。
「それ、男に言う台詞じゃないだろ・・・」
 顔が近付いたからか少し頬を染めそっぽを向いて悪態を付くのに、
「男にではなくて、君に向けた言葉だ」
「え? たい・・・?」
 ―――・・・そっと、唇を寄せた。
「鋼の・・・」
 が。
「な、ちょっと!」
「っぷ」
 グイ、とこちらの顔を思いっきり突っぱねられた。
「・・・ふぁがねの」
「あ、アンタ何考えてんだっ! ありえねぇ!」
 真っ赤な顔でグイグイと両手でこちらの口許を押して来た。そして憤慨したように、公園の先へドスドスと足音荒く離れて行ってしまった。

(・・・また拒否された)
 地味に、落ち込む。実は最初の車の中でも「久しぶりだね」などと言いながら顔を寄せたら「前見て運転しろ」と避けられた。その時は焦りが顔に出ていたのかもしれないと少し反省し運転に戻ったが。今みたいに向こうもそんなに悪い雰囲気じゃなかったのに拒否とは。
 キスするのも嫌な位もう嫌われているのだろうか。そう言えばキス以前に手も繋いでいない。

(・・・もう、ダメなんだろうか)



+++++++++++++++++++++++++++
2009年11月1日 C.C.SPARK4 発行。

一足早い2009年クリスマス本です。

08年春コミ「ベツレヘムの星」の2人の1年後のクリスマスデート話。
お互い想い合う余りにすれ違い気味から始まる、
初デート〜初夜(笑)までの甘めのお話です(当社比)。
当社比初々しい2人(笑)なので、ロイさんがややヘタレ気味かもです(笑)。

もう1つ09年2月に期間限定で掲載したバレンタインSSも再録しています。
(サイトの方はSPページに移転掲載済です。)

・・・ホントはその2つの間の夏の話があったんですが
タイムオーバーしましたorz 

copyright© 2009 triple star_takara,all right reserved