★ Fruits of Chaos ★
●●● プロローグ ●●●
「よし、ここなら大丈夫だ・・・」
西の山奥深く。
物凄い光量の練成反応があった事は、誰も知らない。
―――そして。
「なんっじゃこりゃーーーーーーーー!!」
山奥に絶叫が響いた。
●●● jucy 1 ●●●
「うーーーーーーーん・・・。嫌だぁ・・・。」
「もう、ほらとっとと歩いてよ!」
イーストシティではもう見慣れた赤いコートと鎧姿。
特に変な視線も集める事もなく、2人はいつも堂々とした足取りで歩いていた。
しかし今日の2人の様子は変だった。
一人は足取り重く、一人はそれを引きずるように歩いていた。
「嫌がっててもしょうがないでしょ」
「ぜってぇ嫌だーーー・・・」
「リゼンブールもダブリスも嫌だって言ったの兄さんでしょ!」
「ここも嫌だぁ・・・」
「他にどうしようもないじゃない!」
「うううう」
弟に説教される兄の図。
これもまた珍しい事ではない為、結局は「あぁまた兄の方が騒ぎを起こしたんだな」「司令部に向かっていると言う事はマスタング大佐の雷がこれから落ちるのだろうな」と足取りの重さについても推測し、イーストシティの住人は鎧姿に小さな赤いコートの影が引きずられる様を見た所で、いつもの事と普段通りの視線を投げかけて終わった。
普段の倍以上の時間を掛けて、駅から東方司令部に訪れた二人。
顔なじみの門番をパスし、中に入る。
が、ここまで来てもやはり兄の方の足取りは重かった。
「よー。エドじゃねぇか、久しぶりだな!」
背後から見知ったノッポの少尉の声。
「あ、ハボック少尉、お久しぶりです」
「アル、元気だったか?」
「はい」
人好きのする笑顔を浮かべて来るハボックに、アルフォンスはにこやかに返事をした。
「そっか。良かった良かった。・・・所で、何で室内でフード深く被ってんだ? お前の兄ちゃんは?」
そして素直な少尉は、純粋に今の疑問をぶつけてくる事にしたらしい。
「えーと・・・」
普段は存在を主張するかのように前に出ているエドワードが、今日はアルフォンスの影に隠れるようにして。更にトレードマークの赤いコートのフードを被っている姿に疑問を抱いても仕方がない事だろう。
エドワードの方を見て、アルフォンスが曖昧な笑いを返す。
「アル・・・?」
恨めしい声が低い位置から聞こえて来て、アルフォンスは再び苦笑を洩らした。
「ごめんなさい、ハボック少尉。ちょっと色々ありまして今は言えないんです」
「なんだ、また何かやったのか?」
歩くトラブルメーカーの兄弟として名高いので、ハボックは既に珍しく無い可能性について問いかけをする。
が、エドワードにはお気に召さない質問だったようだ。
「何もやってねぇよ!」
「兄さん・・・?」
思わずいきり立った兄に、弟が冷ややかな目をした。
その視線に気付いて、エドワードは黙った。
「ん? なんか大将、声変じゃねぇか? 風邪か?」
ハボックが不思議そうに、やはり素直に質問をしてくるのに。
「え? あ、そうそう! 兄さんまたお腹出して寝たんですよ」
質問をされたエドワードではなくアルフォンスが答えた事に少しキョトンとしながらも、突っ込まない方が良いんだろうなと言う勘が働いたのか、ハボックはそれ以上追究せず。
「昼間暑くても夜は冷えるぞー。気をつけろよ」
「はい」
ありがとうございますとアルフォンスが答えた所で、ハボックがエドワードをグイと引っ張った。
「っわ!」
「・・・っと! 危ね! おい気をつけろよ」
「はっ! すみません!!」
話し込んでいる内に、前方から急ぎなのか、下士官が書類に目を落としながら走って来ていた。その軌道にエドワードが居たのだ。
「・・・? 大丈夫か?」
廊下の脇に隠すように、ハボックは腕に納めていたエドワードを解放して声を掛けて来た。
「あ、あぁ平気。サンキュ、少尉!」
半笑いしながら、後退さる子供にハボックは訝し気な視線を送る。
「おい、やっぱ具合でも悪いのか・・・?」
「あ! 少尉、すみません。大佐は今日居ますか!?」
幾分慌てたようにアルフォンスが割って入ってきた。
「お、おう。今の時間なら執務室にいるぜー」
その勢いに押されるように、執務室を指差した。
「ありがとうございます! 兄さん、行くよ!」
「うー・・・」
弟に連行されるように、執務室に向かう兄弟を見送り。
上司の部屋に行くのを嫌がるのはいつもの事だが、いつもの悪口雑言が無く、覇気がない事が気になった。
―――それに。
「・・・何か柔らかかったような・・・?」
腕に抱き込んだ時の感触を思い出しつつ、はて、と首を傾げるハボックであった。
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2009年5月4日スパコミ発行予定。
※基本は少年エドですが、錬成失敗で話の8割は少女です。御注意下さい!
不思議な実によって、少女になるエドワード。
宿にも泊れず、ロイの家でお世話になる兄弟だが、
最初面白がっていただけのロイは無防備のエドに段々気が気でなくなって来る。