★ キミの心を狙い撃ち! ★
「あれ?」
「やぁ、お疲れ様、エドワード君」
バイト先から出ると、いつもの車が待っていた。
「・・・アンタ、忙しいんじゃなかったのか?」
「うん? いや、ちょっと落ち着いたから大丈夫だよ」
暗いから分かり辛いが、少し頬がこけた、気がする。
「・・・別に、義務じゃないし、忙しいんだったらわざわざ迎えに来なくていいんだぜ?」
少しずつ痩せていった、父親を思い出す。家族が大事だ、と忙しい仕事の合間に家事をこなして。疲れていた筈なのに、いつも笑っていた。その表情とロイの表情が被る。
「そんな私の楽しみを奪わないでくれ! これがあるから頑張れるんだよ」
大げさに言うのに、やはり父を思い出して、何となく重い気分になった。
「エドワード君?」
「何でもない」
いつものように反論しないのを不思議に思ったのかロイが声を掛けて来たが、スタスタと助手席に向かう。
後部座席には何も無い。食料調達は恐らくこの後、行っていたのだろう。車のデジタル時計を見ると、21時15分。こんな時間まで食事も取れない位忙しいのだろうか。
そんな事を微塵も感じさせず、ロイが運転席に座った。
「今日はすまなかったね。ハボックなんぞに任せてしまって」
ハボックも安全運転だが、静かに発進させ殆ど振動の無い運転に、ロイの車だな、と思った。
「謝る必要ないし。あー、ハボックさんの運転のが良かったなー。話面白いし」
窓に頬杖を付いて、そんな事を言うとロイが「そんな!」と慌てたように振り返った。
「な、君はハボックに心奪われてしまったのか?!」
「テメェ基準でモノを考えるんじゃねぇ! って言うか、前見ろっていつも言ってんだろ!」
グイ、とこちらに向いていた顔を押しやると
「ふはない」
タコのような口ですまないと言った。
「横を向きたくなる君の魅力が悪いんだ」
「あぁそうですか」
力説する男に、軽く流す。
「ったく、明日もハボックさんが良いなー」
ハボックには迷惑だろうが、車内の中、近くで見たロイの顔はやっぱりこけていた。だから―――。
「・・・」
「つか、別に元々送って貰う必要ないし」
「・・・・・・・・・・・」
「何だよ?」
いつも好き勝手に喋る男が、何か言いたそうにして黙っている。それを促すと。
「・・・・私より、ハボックの方が良いかい?」
「へ?」
心なしか落ち込んだ風に言うのに、戸惑う。
何だよ、ソレ。いつもの根拠の無い自信はどうした。
「そうだな、ハボックの方が君と年齢が近いし。・・・私はどうしてもう少し遅く生まれなかったのかな」
「は?」
何故そこまで大げさになるのだろう。相変わらず思考回路の読めない男だ。
「いや、アンタ同級生とかに居られても困るし」
同級生のロイ・マスタング。不本意ながら成績も運動神経も良いこの男、恐らくクラスでいけ好かない奴になるに違いない。
「迷惑かね?」
「迷惑ってーか、多分友達になんねぇと思うし。だってどう考えたって性格合わないし」
「そんな・・・!」
きっぱり言うと、ショックでロイは突っ伏しそうになった。
「だからっ! 前見ろ、前っ!」
「涙で前が見えない・・・」
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2010年06月27日 C.C.東京124 発行。
「キミの瞳をタイホする!」の続編/警察官ロイと高校生エドの現代パラレル本です。
が、どちらも読みきりなので、前作を読んでいなくても大丈夫かと。
タイトルは「きみのハートをねらいうち」と呼びます。
本誌最終回を迎えて、諸事情によりパラレルに走ってしまいました(笑)。