★  モラトリアム 【moratorium】 ★




「一週間経っちまったな・・・。研修が」
呟いた所で、2階からロイが姿を現した。
「・・・ほう」
「・・・何だよ」
「いや、今日は可愛いね」
「でしょう? 中々じゃないですかっ?」
 玄関まで見送りに出たアルフォンスが嬉しそうに言った。ウキウキしている気がするのは何故だろう。
「元が良いからな。オレは何でも似合うんだ」
「・・・そうだな」
 ヘヘン、と威張るエドワードに、ロイはからかうでもなく感心したように頷いた。
 アルフォンスの見立てで、今日のエドワードはゆったりとしたモヘアのタートルネックセーターに、モカブラウンのワイドパンツ、アイボリーのコートを手にしていた。余り外でコートを脱ぐ事がない生活をしていたので、中が適当だったのだが、今日は何故かアルフォンスが張り切った(多分、ヒマになって来たのだと思われる)。
 本人は怒るだろうが、小柄さも相まって、本当に女性だか男性だか分からない。
「? 化粧してるか?」
 ロイが気付いたように、顔をマジマジと見て、もしかして、と聞いてきた。
「あー、ナンだっけ? 色つきのリップクリーム?」
「イチゴ味なんですよー」
「どうりで何か甘い味がすると思った!」
 どっから調達して来たのかは謎だが、乾燥する季節、ちょうど良いやと塗りたくった。鏡を見たら若干赤味を帯びてツヤツヤとしていた。
「わざわざすまないな」
「まぁ、口紅って訳じゃねーから別にいーよ。冬で乾燥してるから丁度良いや。それに年齢は誤魔化しようないからな。少しは大人っぽくしておくよ」
 ロイが嫌だろう?と言うのに、気にしてないし、と答える。一度受けた約束は一応守るつもりだ。手を振るとロイは笑みを浮かべた。
「それに今日は髪・・・」
「あ! 時間時間! ほら、そろそろ行くぜ」
 ロイが何事か言いかけたが、時計が目に入って男を急かす。ただでさえ良く分からない状況になっているのに、遅刻してホークアイの機嫌を損ねる訳にはいかない。





+++++++++++++++++++++++++++
2010年冬コミ発行。

ストーカーに遭うロイ。
囮の女性が怖い目に遭ったので、
エドに囮で恋人のフリを頼むお話。
割とビジネスライクな2人で、
付き合っていない割にイチャイチャしてます(笑)。
R18は少ないです・・・。

copyright© 2010 triple star_takara,all right reserved