★ Vintage -1- ★
「よぉクソ大佐」
「こんにちは」
相変わらず約1名礼儀もあったもんじゃない来訪者に苦笑しつつ、こちらもいつも通りの挨拶を交わす。
「や、鋼の。長らく音信不通だった割に背も成長していないようだね」
「誰がミジンコチビか!」
「兄さん・・・」
いつも通り過剰反応する兄に弟が冷たい眼差しを向けた。
「君もこんな兄を持つと大変だね」
「んだと!」
「えぇ、本当に・・・」
「アルぅ?」
しみじみ言った弟に非難じみた目を向ける兄。
「ずいぶん久しぶりだが、今回は何処まで旅していたんだね」
ソファに促し、自分も一休みとばかり向かいのソファに腰を下ろす。
結構詰めて仕事をしていたからコレくらい許されるだろう。
「西の田舎〜な村。なんっもなくってさー」
「のどかな所でした」
フォローするように笑うアルフォンスの隣でエドワードがブチブチ言いながら身体に不釣合いな大きなトランクを引っ張りあげる。
「で、成果はあったのかね?」
「全く」
肩を竦めてホラよ、と言うように報告書を差し出される。
「残念だったな」
受け取った所でノックの音が響いた。
「入れ」
「失礼致します」
ホークアイがお茶を載せたトレイを持って入室してきた。
「ありがと、中尉」
「ありがとうございます」
コトリ、と兄弟2人分紅茶が置かれると、自分には絶対向けない笑顔で御礼を言う子供。
・・・憎たらしい。
自分にも淹れられたコーヒーを一口飲みながら、目の前で和やかにまるで姉弟のように喋る3人を見つめた。
「大佐、例の調査結果です」
「あぁ、すまんな」
「じゃあまたね。エドワード君、アルフォンス君」
トレイと共に器用に持ってきていた報告書の束を受け取り、ホークアイは退室していった。
副官の持ってきた調査結果をパラリと捲ってみると、化学式が書かれた報告書が数枚あった。
「おや・・・」
「なに?」
ざっと調査結果書に書かれた見解に目を通していると、興味深そうに金の瞳が身を乗り出して問うてきた。
「兄さん行儀悪い・・・」
軍部の情報に気を遣ってか弟が嗜めるように兄を見やる。
「ははは。鋼のの礼儀について今更期待していないからアルフォンスは気にしなくていいぞ」
「オレも礼儀を払うべき人には払いますがねぇ」
「奇遇だな、私もだ。ほら」
ふんぞり返って言う子供にテーブルに置いてあった報告書を投げて渡した。
何だかんだ言いつつエドワードは聡い。自分が軍の事件の内容を滅多に知らせる事がない事、隠される情報なら徹底的に隠されているだろう事を分っている。自分が居る場で書類が出て目の前で自分が広げた、と言うことは聞いても良い情報、または自分の持つ地方のオフレコの情報を聞きたいのだ、と言う判断を下した事だろう。
「君たちも耳にしていると思うが」
「ボクも見て構わないんですか?」
「構わんよ。意見も聞きたい」
兄と違って弟が心配気に伺ってくるのに笑うと、2人で覗き込んで。
「「あ」」
「最近巷で騒がれている”吸血鬼事件”だ」
2人揃って声を上げた。
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2008年6月1日大豆*気分2発行。
イーストシティで吸血鬼事件。何を思ってか事件ものに・・・。
しかも続きます。すみません(汗)。
表紙間違えてエドさん生身ですが、機械鎧設定です。
素材サイト:”STAR DUST”様、”Alice+Ridder”様