★ Wedding Bell ★
掌にストレートの長い髪の毛の感触がする。サラサラでスベスベ。色んな女性の髪を見たり触れてきたりしたが、こんなに気持ちの良い髪に出会った事は今までない。初めてだ。
誰だろう、とロイは薄目を開くと、早朝の淡い光を浴びてキラキラと輝く金髪が目に入った。
手触りだけでなくつややかな蜂蜜色がこれまた見事だ。そこから覗く白いうなじ。こんな極上の髪と肌を持つ女性とは久しく出会っていなかった。ロイは無意識にその人物を手繰り寄せた。腕にすっぽりと収まるその身体のサイズも申し分ない。
心地良さに抱き締める腕に力を込めた。
―――ら。
「准将てば、寝てる時は大胆」
そんな甘い声……では無く、少年の、声。
「!?」
一気に目が覚めた。
「おはよう、ダーリン」
腕の中から稀有な黄金色の瞳が笑んだ。そんな瞳の持ち主は2人しかいなくて、その内、思い当たる人物と言えば…―――。
「鋼の!」
ロイはガバ、と起き上がる。
「なんだよ。ハニーって呼ばないのかよ」
不服そうに尖らすその唇も桜色でふっくらとしているけれど。
―――彼はれっきとした男の子だ。
「何故君がここにいる!」
「えー、昨夜一緒に寝たろ?」
「そうじゃない! 何故私の腕の中にいる!」
昨夜は確かに妥協してと言うか面倒になって、一緒に寝た。しかしベッドの端と端で寝た筈だ。何故腕の中などと、こんなに男と密着して目覚めなければならないのだ。
「准将がオレを引っ張ったんじゃん。アンタ抱き枕癖があるって昔ハボック少尉に聞いたけど、…今も直ってないんだな。あ、オレ抱き枕じゃねーぞ」
伴侶なのに、とムゥと不服そうに言う。
「当たり前だ! 枕は喋らん!」
「そりゃそーだろ。言う事ボケてるけど、アンタ案外朝元気じゃん」
寝起き悪いって言うから、ちょっと楽しみにしてたのにー、と猫のような大きな目を細めてコロンとベッドに転がる。
その動きは小柄な身体なせいか仔猫を思わせて、仕草だけは可愛らしい。が、なにぶん本人がカワイラシクナイ。
「シャワー行って来る!」
「行ってらっしゃーい」
ヒラヒラと手を振られて、
「君もいい加減、人のベッドから出たまえ!」
シーツを引っ張って転がす。そうか、昨夜もそうすれば良かったのだ、と今更思いついた。今度やったら転がそう。よし。
「乱暴だなぁ。DVで訴えるぞ」
「構わんぞ。そうしたら家を出て保護されるだろう?」
そんな暴力を振るう夫(しつこいようだが違う)と一緒に暮らすのは危険だろう、と実家なり施設なりに保護される筈だ。即ち新婚生活(しつこい以下略)は解消だ。
「間違えた。ホークアイ大尉に訴える」
「………………それは止めてくれ」
付合いが長いが為に、こちらがダメージを受ける的確なポイントをすぐ突いてくる辺り、性質が悪い。
「……シャワー行って来る」
「おう、行ってらっしゃーい」
何故か分からない内に主導権を握られ、ロイはトボトボとバスルームに向かった。
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2012年5月スパコミ発行予定。
2010年8月22日発行の「Wedding Bell〜intermission〜」の本編。
最終回後、押しかけ女房の体でロイの家にやって来たエドワードと
ロイのドタバタ→くっつくまで。
ギャグテイストですが、中盤ややシリアス?かもです。
本編のほか、2人の夜、周りを囲む人々、初夜、新婚生活、を書いた番外編4本と、
intermission編を再録。
当サークル最後の本で、結婚しました(笑)。