「うーーーー・・・」
人気のない資料室でズルズルと座り込む。
どうにもこうにも、腹が痛い。
多分不摂生やら、寝不足やら、資料の読み過ぎやらで、消化機能が少し弱っているのだろう。
そんなに柔なつもりじゃなかったが。
取りあえず、アルフォンスが心配するし、東方司令部の人達も優しいから心配するだろう。
自業自得と言えばそれまでの事だから、何か問われる前に、左官以上しか入れないここに逃げ込んだ。
「いてぇ・・・」
座り込んで、丸まる。
この体勢が一番楽かもしんない。
けど、床が冷えていて、シクシクズキンズキンと言う音がさっきよりも強くなったみたいだ。
奥に行けば、閲覧用にソファがあるけれど、ちょっとそこまで頑張れない。
冷や汗が出て、手先が冷たくなっているけど、片手が機械鎧なので擦っても余り暖は取れなかった。
痛く無い痛く無い痛く無い。
自己暗示を掛けて、目を閉じてゆっくり息を吐く。
しばらくそうしてやり過ごす。
「まったく、本当に君はつれないな」
頭上から声が掛かったかと思うと、視界が暗くなって多分高くなった。
「なっ!」
暗くなった正体は毛布で、高くなったのも違わず、男の腕に抱き上げられていた。
毛布に巻かれて、スタスタと先程まで視線で追ってたソファに辿り着く。
しまった、普段人が来ないから安心してたけど、左官以上の資料室、大佐は勿論入れるんだった。
「・・・っ! 降ろせっ!」
「降ろさない」
はっ、と我に返り、暴れてみたものの、強い腕に囲い込まれて脱出は出来なかった。
気付くと、ソファに座した男の膝の上に横抱きに抱えられている、恥ずかしい状態となっていた。
「ちょっと、離せっ!」
「離さない」
揶揄うでも無く、真顔で・・・と言うより、不機嫌な表情で覗き込まれる。
「・・・」
「・・・なんだよ」
無言で見られて、居心地が悪く視線を反らす。
尚も見つめられ、チラ、と目線を上げると心配気な顔に変わっていた。
「・・・大佐?」
大きな手が頬を辿った。
ゆっくりと、撫でられる。
何度も行き来する掌に、暖かくて気持ちよくて、ふ、と思わず息を洩らすと、ぎゅ、と抱き締められた。
「君は一人で抱えてばかりだ」
「・・・え?」
「顔色が良くない。具合が悪いのだろう?」
「・・・なんで」
司令部に来る途中にしんどくなって、来るなり資料を見てくる、と挨拶もそこそこ駆け込んだから、大佐とは一瞬しか会っていない筈だ。
指令室も通りすがりに声だけ掛けたから、会話はしていない。
「余り恋人を嘗めないで貰いたいね」
「な・・・だって、今日特に話してないし・・・」
「君の事だ。わからない筈がないだろう? 執務室に来て休むかと思えば、私の所にも来ないで、こんな所で一人やり過ごそうとして」
毛布を肩に掛け直されて、再び抱き締められて背中を撫でられる。
じわり、と温かさが身体に広がる。
「・・・別に、大した事じゃないし、・・・忙しいのに心配掛けるのも悪いなって・・・」
「私は心配もさせて貰えないのかい?」
ボソボソと視線を反らして呟くと、空いた片手で、頬と目許を親指で撫でられる。
「そんな事は・・・」
「君は甘えを良しとしないけれど、せめて恋人の前位では甘えてくれたまえよ」
拗ねたように、コツ、と額を合わせられる。
「・・・でも」
「その方が私が嬉しい」
言葉を遮って、ちゅ、と目尻にキスを落とされる。
嫌味でも無く、怒るでも無く、静かに落ち込んだ様に言う様に。
本当に心配をさせてしまったのだな、と申し訳なく思う。
「・・・悪かったよ」
「わかれば宜しい」
きゅ、と抱きつき返せば、やっと微笑みを見せて、
でも心配させた仕返しとばかりに、柔らかく唇を食まれた。